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昨年(2020年)は、年の初めから新型コロナウイルスの感染が日本国内でも始まり、あっという間に日本全土に広まりました。5月に神奈川県で開催する予定だった全国大会も中止になりましたが、オンラインという今までにない形で、成功裏に開催することができました。ICTの技術に精通した若い指導者仲間のボランティア精神と開催県連盟の神奈川連盟のローバースカウトの協力、多くのスカウトの参加によって作りあげられた、大きなプロジェクトでした。ボーイスカウトの若い仲間たちの情熱とチームワークを感じました。感謝しています。

昨年は、コロナ禍において「Scouting Never Stops!」をキーワードに、各隊、各班、各組のスカウト、さらに隊指導者や団運営者の皆さんが、通常と違った集会のあり方を模索し、実践していただいたことに感謝いたします。困難な状況でもスカウティングの歩みを進められたことは、大変素晴らしいことだと思います。一方で、今までの直接対面による活動とは違い、お互いにパソコンなどで会話や動作を伝えるため、もどかしさを感じることもあったのではないでしょうか。日本連盟の諸会議についても、ほとんどの会議をオンラインで行い、会議構成者の各県からの移動を減らし、意思疎通と経費削減を図ってきました。「新しい生活様式」での活動は、今後もしばらくは変わらずに実施されていくと思います。

2020年9月末時点のボーイスカウト隊のスカウト数は14,147人で、隊数は1,714隊、1隊あたりの平均スカウト数は8人でした。ちなみに、ベンチャースカウト隊はスカウト5,892人、隊数は1,477隊、1隊あたりの平均スカウト数は4人です。ボーイ隊とベンチャー隊を合計しても12人のスカウトたちです。言い換えれば、今や、ボーイ隊は1隊に1班、ベンチャー隊は1チームしか存在しない隊が、全国各団の77% を占めているのが実情です。2016年に策定した日本連盟創立100周年を目指した長中期計画に、「ボーイスカウト(BS)部門とベンチャースカウト(VS)部門一体化を含むプログラムの見直し」があります。現在、プログラム委員会が、実証隊によるBS部門とVS 部門の一体化を研究しています。

太平洋戦争終了後、日本連盟は1949(昭和24)年に再発足し、その後加盟員が年々増加していきました。当時は、12歳から18歳までがボーイスカウト隊(部門)でした。1952(昭和27)年、高校生年代が増えてきたことにより、15歳以上のスカウトを対象にした年長スカウトのプログラム(課程別、組織)が制定され、今から62年前の1958(昭和33)年に、少年隊(ボーイスカウト部門)と年長隊(旧シニアースカウト部門、現ベンチャースカウト部門)が年齢によって区分けされるようになりました。当時は、加盟員が右肩上がりで増えていった時代です。少年隊の人数が徐々に多くなり、30人以上で2こ隊編成を行う団もたくさんありました。年長隊も企業内スカウト隊も多々存在していましたし、年長隊でも平均で20人ほどの隊が多く存在していました。このような状況でしたので、部門を分けることは当然のことでした。また、この年に今までの隊(単位隊)制度から現在の団制度への改定がありました。第2 次ベビーブーム(1971〜1974)を含む1965年ごろから1985年にかけて、日本全国の団で各隊溢れんばかりのスカウトが活動していました。

現在の加盟員数はどうでしょうか。加盟員数は前述のとおりで、1983(昭和58)年をピークに右肩下がりの状況です。余談ですが、カブスカウト隊は1隊6組(6人×6組)36人まで、組旗の色も1組は「赤」2組は「白」3組は「黄」4組は「緑」5組は「青」6組は「えび茶」と、1隊の最大登録数が決められています。以前は最大人数を超えて2こ隊編成する団もたくさん見受けられましたが、現在「赤」「白」の組旗は見受けられるものの、残念ながらそれ以降の組旗の色は数少なくなっています。

さて、ボーイ隊とベンチャー隊の話に戻りましょう。かつて、年長隊が編成できない団においては、少年隊の中に年長班を設けることができ、年長班のスカウトは年長スカウトプログラムに取り組みながら、少年隊のジュニアリーダーとして上級班長や隊付を兼務していました。教育規程では、上級班長および隊付は、隊長が必要に応じて班長会議に諮はかったうえで任命をすることになっています。上級班長や隊付を任命し、彼らに隊の運営を任せているという隊は、全国にどれだけ存在するでしょうか?隊員数が少ないために、野外活動の基本的なこと(手旗信号、結索法、コンパスの使い方等々)を、学校の授業で先生が教えるように、隊長や副長が直接スカウトに教えているということはないでしょうか? 年間プログラムの立案、隊集会のプログラムの立案、隊ハイキング、隊キャンプのプログラムも指導者の手で作成されていませんか?

本来のボーイスカウティングに戻りましょう。スカウト技能を教えるのは、上級班長や班長の役目であり、上級班長から各班長へ、そして班長が班のスカウトへ伝えていくものです。そして、隊付は隊の与えられた任務を分担し隊運営のサポートを行います。前述の実証隊では、ベンチャースカウトがボーイ隊のジュニアリーダー( 上級班長、隊付)としてボーイ隊の運営を行う、本来のボーイスカウト隊のあり方についてを検証しています。隊長の仕事は「おきて」や「日日の善行」の実践をスカウトたちに促し、隊員を激励し、自ら修得させ、その成長を助けていくことです。そして、ジュニアリーダーが、隊集会、隊ハイキング、隊キャンプの計画を班長会議で作成することが、班制教育の1 つの要素です。ただし、実現するには時間が必要です。日本連盟では、ジュニアリーダー( 上級班長、隊付等)のトレーニングを試験的に数回実施し、その後、ブロックまたは県連盟で行っていただくように考えています。

本来ならば、班長訓練は隊長が行うべき仕事であって、決して地区や県連盟、日本連盟が実施するものではありません。それは重々承知していますが、現在、全国的に隊での班長訓練が行われていない現状では、どこかで指導者訓練のように見本を示し、ジュニアリーダーおよび隊長の参加によるジュニアリーダートレーニングを実施し、ボーイスカウティングのあるべき運営を隊長が修得できるよう、支援していけるようにと考えています。

最後に、今後、ビーバースカウト部門およびカブスカウト部門の年齢区分の改定についても、検討と実証を含む2 年間の実証隊の報告をしたいと考えております。

 

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2021年1月号より

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