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一緒に考えよう! 持続可能な社会のために

持続可能な開発目標(SDGs)は、先進国と途上国が一丸となって達成すべき17の目標と169のターゲット(具体的な取り組み)で構成されています。日本連盟機関誌「スカウティング」ではこれまでも、私たちにできる取り組みなどをご紹介してきましたが、7月号では、改めてSDGs の「17の目標」それぞれが目指す内容をご紹介するとともに、目標4「質の高い教育をみんなに」に関する活動の取り組み例をご紹介します。

 

参考:国連広報局資料
『我々の世界を変革する: 持続可能
な開発のための 2030 アジェンダ』

SDGsを支える要素

SDGsの目標とターゲットは、「人間」「豊かさ」「地球」「平和」「パートナーシップ」の5つの分野で、目標達成に向けた行動を促します。

人間[ People]あらゆる形態の貧困と飢餓に終止符を打ち、尊厳と平等を確保する(目標1、2、3、4、5および6)。
豊かさ[ Prosperity]自然と調和した、豊かで充実した生活を確保する(目標7、8、9、10 および11)。
地球[ Planet]将来の世代のために、地球の天然資源と気候を守る(目標12、13、14 および15)。
平和[Peace]平和で公正、かつ包摂的な社会を育てる(目標16)。
パートナーシップ[Partnership]確かなグローバル・パートナーシップを通じ、アジェンダを実施する(目標17)。


 

17の目標

すべての目標に一度に取り組むのは難しいかもしれません。17の目標が目指す内容を一つひとつ理解することで、自分にできることを考え、活動や生活の中で取り組めることから実践しましょう。

1.貧困をなくそうSDGs の根幹にある、主要な目標のひとつです。お金がないために不自由な生活をしている人を減らし、食べ物が手に入らないために命を落とす子どもをなくすことだけでなく、男女が平等に雇用される機会を増やし、安心して生活できる場所や病院、金融などの生活に必要な基本的サービスを確保することも含みます。
2.飢餓をゼロに貧困をなくすという大きな目標の中で、特に食料や農業生産に関する目標です。長い間食べることができず栄養不良になる飢餓状態をなくし、すべての人が栄養のある十分な食事をとれるようにすることを目指します。また、気候変動や極端な気象現象になどにも強い農業を実践し、生産性の向上や生産量を増加させることも重要です。
3.すべての人に健康と福祉を健康の確保と福祉の促進が目標です。病気の予防と適切な治療、出産支援、薬やワクチンを入手できる社会の実現が求められます。病気だけでなく事故によるケガや死亡者を減らすこと、空気や水、土の汚染を減らすこと、薬物やアルコール等有害物の乱用防止や治療の強化などもこの目標に含まれます。
4.質の高い教育をみんなに誰もが平等に質の高い教育を受け、あらゆる機会に学習できることが目標です。持続可能な開発にとって最も有効な手段である教育を平等に受けることで、貧困状態から脱却し、自立した人生を送ることができます。安全で通いやすい学校設備を整え、教師を確保し、ジェンダー差別や貧富の差をなくすことが必要です。
5.ジェンダー平等を実現しようジェンダーの平等は自身の能力を最大限発揮するために必要不可欠です。世界には、性別を理由に平等な機会が与えられない状況があります。女性や女児が「身体的」「精神的」「性的」に傷つくことをなくし、家事労働が評価され、妊娠や出産に関する女性の権利が守られ、政治や経済などに平等に参加することが目標です。
6.安全な水とトイレを世界中にすべての人が下水やゴミ処理などの衛生設備が整った環境で暮らせること、水の再利用に取り組むことで、安全な水や衛生環境を確保し、管理することが目標です。これらの解決と貧困の解決は大きく関係します。水に関連する生態系( 山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼など)の保護や回復も含みます。
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに従来のエネルギーのもとである化石燃料は、生活を快適にする一方、燃焼することで発生した二酸化炭素(CO2)が地球温暖化の要因になります。環境に優しい再生可能エネルギーの利用を増やし、安価に安定したエネルギーを効率よく使うためのインフラ設備への投資も各国で進んでいます。
8.働きがいも 経済成長もこの目標の達成には、長期的な経済成長の継続、生産性の高い産業の拡大、労働者の収入や健康、教育、就業の平等な機会、著しく不利な立場の人をなくすこと、すべての人が適切で継続性のある生活環境にあることが重要です。不当な児童労働の解決、若者や障がい者を含む男女平等な雇用なども含みます。
9.産業と技術革新の基盤をつくろう生活や労働に必要な施設や設備、技術革新が、経済成長と開発に必要です。都市部がこれらインフラの恩恵を受ける半面、そうでない地域も少なくありません。災害に強いインフラや持続可能な経済の発展、新しい技術の創造、経済活動を支える基盤の開発や安価にインターネットに接続できる環境の実現が求められます。
10.人や国の不平等をなくそう性別や年齢、障がい、人種などを理由に、各国の国内や国家間でさまざまな不平等や格差問題が起きています。個人の所得格差のほか、先進国と開発途上国との経済格差の要因でもある問題を解消するために、貧しい人の収入を増やし、特定グループを差別するような法律や慣習をなくすことが目標です。
11.住み続けられるまちづくりをすべての人が安全で住みやすい家、水や電気など必要なサービスを得られるまちや地域社会で暮らせることを目指します。また、女性や子ども、障がい者や高齢者にとっても安全で使いやすいこと、災害に強い場所にすること、世界の文化遺産や自然遺産の保護、大気汚染や廃棄物の管理なども含みます。
12.つくる責任 つかう責任廃棄食材の量を世界全体で半分に減らす、物をつくるときに排出される有害な化学物質が水や空気や土を汚さないように管理する、ゴミを減らしリサイクルして資源化することなどを通じて、廃棄物の削減などを目標にしています。より少ない資源で良質なものを多く得る、持続可能な生産と消費の形が重要です。
13.気候変動に具体的な対策を生活の中でCO2 の排出などにより、地球温暖化が進んでいます。温暖化現象によって世界各地で気候が変化しています。これは、先進国や開発途上国の枠組みを超え、全世界で取り組むべき課題です。この目標では、気候変動の問題と気候変動が原因の自然災害に対する備えの強化を目指します。
14.海の豊かさを守ろう海洋汚染の多くは、人間の生活から発生したものが原因です。汚染を減らすには、陸上での生活習慣や活動を見直すことが必要です。また、海の環境を破壊する違法な漁業の規制、海に関連する観光や水産養殖などの管理を通じて、海洋資源の持続的な利用により経済を増大させることも目標です。
15.陸の豊かさも守ろう森林や草原、砂漠などの陸地が地球の表面積の約30%を覆っています。これらの生態系は、仕事、食料、燃料、医療品などの源であり、生活に欠かせません。これらを守り、再生し、持続させるために、森林を保護し、砂漠が今よりも増えないようにすることが目標です。また、絶滅危惧の動植物の保護や、生物多様性が失われることを防ぐことも含みます。
16.平和と公正をすべての人に持続可能な開発に向け、すべての人が参画できる平和な社会をつくり、地域や国、世界のどのコミュニティーにおいても司法を利用して安心に生活できる社会の実現が目標です。内戦や紛争など情勢不安が続く過酷な環境にいる人たちが家族と安心に生活でき、平等で暴力のない社会制度を作ることが必要です。
17.パートナーシップで目標を達成しようすべての国が協力し合い、政策の中に1 から16まですべての目標を取り入れ、目標達成のための行動や方法を強化し、促進することを目指します。それぞれの国が何をどのように取り組むのかを考えること、目標達成に向けて予算を使うこと、先進国が発展途上国の目標を達成するために支援することも目標です。

 

個別の目標から考えよう
目標4
「質の高い教育をみんなに」

日本は、義務教育の小・中学校だけでなく、幼稚園や保育園、高校や専門学校、大学に至るまで、本人の希望や家庭の状況によって学習の機会を得ることができる、非常に恵まれた国です。一方、世界には、家庭の支援や本人の努力だけでは皆が平等に教育機会を得ることができない国が多くあります。
この目標は、誰もが平等に教育の機会を得ることで、学習によって得た知識や環境により、根本的な貧困状態を解決することを目指しています。
今号では、ユニセフ(unicef)※ 1の取り組みから活動の例をご紹介します。


活動の一つの例として、募金活動から「海外事情」について考えてみましょう。ユニセフが毎年11月〜12月をキャンペーン期間にしている「ハンド・イン・ハンド募金」をボーイスカウトも支援しており、これまでも多くの団にご協力いただいています。街頭で「募金活動」を行う際に、その活動に関連する活動を組み合わせることで、自分たちが呼びかけた募金によって支援できる国がどのような地域や情勢にあるのかを知るなど、海外に目を向ける機会にもなります。

  • なぜこの募金が必要なのか、なぜ私たちが行うのかを隊や団で考えてみる
  • 募金を実施するための準備として、募金箱やチラシを作る。
  • 募金の効果がイメージできるようなクイズを作る。
    例:ワクチン何回分、えんぴつ何本分
8月5日(水) 追記
今年のハンド・イン・ハンド募金は感染予防の観点から街頭募金は行わず、その他の支援できる方法で取り組むことになりました。そのため、私たちの活動がどのような意義があるのか、実際の募金活動ができるようになった際にどんなことができるのか、考える機会にしてみてください。具体的な取り組みについては、日本ユニセフ協会のWebサイトや各団宛に届くお知らせ(それぞれ10月上旬頃を予定)にてご確認ください。
関連するチャレンジ章に挑戦しよう
国際:支援を必要としている世界の国を選んで、細目(4)の内容を調べてみる。
フォレストガーディアン:細目(1)に関連付けて、豊かな森につながる、水を大切にする方法を考える。


2018年に開催した第17回日本スカウトジャンボリー(17NSJ)で、「識字(文字が読めること)」をテーマに実施したプログラム(協力:石川ユニセフ協会)を参考にして活動に取り組んでみましょう。17NSJのプログラムは、「自分たちが読めない言語だと、目の前の水が安全かどうかを確認することすら困難である」ということを体験することにより、「文字が読めないと、周りにあふれる情報や注意事項を理解できない」ということを理解する内容でした。
紛争や大きな災害の影響を被っている国の若者の識字率は、10人に3人といわれ、文字が読めないなどの理由により、生活が危険と隣り合わせの状態にある人などがいます。文字が読めることの大切さや教育を受けることができる環境の重要性、世界の社会問題などについて、以下のような活動を通じて考えてみましょう。

  • 学校に通うことができず、字を読み書きすることが困難な子どもたちに対して、自分ができる支援等の方法を考える。
  • 他の国の文化や言語、世界情勢について個人や班で調査する。
  • 支援が必要な国や課題を調べ、関連団体の活動に参加(奉仕)する。
  • 班などで、互いに違う国の言語や暗号を使った問題を出すなどし、言葉や文字を理解することについて考える。

 

関連する選択課目技能章に挑戦しよう
公民章:細目(6)に関連付けて、「平和」「人権」について調査し、まとめてみる。
世界友情章:細目(2)や(7)に関連付けて、支援を必要としている国について研究する。
環境保護章:細目(2)や(6)に関連付けて、安全な水の確保について考えてみる。

 

「行動の10年」がスタート


2015年9月の国連サミットで採択された国際目標であるSDGsは、2030年までに持続可能でよりよい世界にすることを目指しており、世界各地で進展が見られますが、2030年までにこれらの目標を達成するためには、今よりも取り組みのスピードを速め、規模を拡大していかなければなりません。
2030年までちょうど10年の今年から、SDGs達成のための「行動の10年(Decade of Action)」が始まります。「行動の10年」において、貧困やジェンダー、気候変動、不平等や財政格差の解消に至るまで、世界のさまざまな課題に対する持続可能な解決への取り組みを加速させることがますます求められます。
これからの10年で、私たちが一人の人間として、そしてスカウトとして、どのような行動を起こしていけばいいのかを継続して考え、行動していきましょう。

※1 ユニセフ(unicef: 国連児童基金):すべての子どもの命と権利を守るため、最も支援の届きにくい子どもたちを最優先に、約190 の国と地域で活動している団体です。保健、栄養、水と衛生、教育、暴力や搾取からの保護、HIV/エイズ、緊急支援、アドボカシー( 政策提言)などの支援活動を実施し、その活動資金は、すべて個人や企業・団 体・各国政府からの募金や任意拠出金でまかなわれています。

 

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2020年7月号より

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