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■ 野外活動のための安心・安全講座【特別編】

新型コロナウイルス( COVID-19)

感染拡大が騒がれ、世界保健機構( WHO)が「パンデミック( 世界的大流行)」と表明している新型コロナウイルスについて現時点(2020 年4月1日)で分かっていること、予防対策についてお話しします。野外活動だけではなく、日ごろのスカウト活動においても予防対策を強化するために役立てましょう。

1. ウイルスの特徴
ヒトに感染するコロナウイルスは、風邪のウイルス4種類と重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、合わせて6 種類があります。
今回の新型コロナウイルスは、これらとは異なる新しいウイルスです。主に呼吸器感染症を起こし、病原性はSARS やMARS より低いレベルと考えられています。

2. 症状
呼吸器系の感染が主体であり、上気道炎、気管支炎、肺炎を発症すると考えられます。しかしこのウイルスに感染した人全員が発症するわけではなく、無症状の人( 不顕性感染)が多く存在すると考えられます。症状は、発熱、咳、筋肉痛、倦怠感、呼吸困難などが比較的多くみられ、頭痛、喀痰、血痰、下痢、嗅覚・味覚障害などを伴う場合もあり、長く続く発熱と倦怠感が特徴ともいわれています。
少数ながら見られる重症例は、肺炎を発症していると考えられますが、死亡例では急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や敗血症、敗血性ショックなどの合併が考えられ、重症化しやすい人は、高齢者や基礎疾患( 心臓病、糖尿病、悪性腫瘍、慢性呼吸器疾患など)をもっている人たちであるといわれています。

3. 診断
症状のみで臨床的に診断を確定することはできませんので、まずは他の呼吸器感染症との鑑別が必要です。新型コロナウイルスに「感染した人との濃厚接触がある」あるいは「他に原因が特定できない肺炎である」人については、保健所と相談してPCR 検査※ 1 を実施することになります。

※ 1 PCR 検査: Polymerase Chain Reaction( ポリメラーゼ連鎖反応)。微量の検体を高感度で検出する手法のことで、顕微鏡で見ることのできない病原体の有無を調べる検査のこと。

4. 治療
現在、ワクチンなど有効性が確認された治療法はありませんので、基本的には対症療法となります。肺炎を認める人などでは、必要に応じて点滴や酸素投与、人工呼吸器装着などの全身管理を病院で行います。

5. 予防対策
重要なのは、「呼吸器衛生」咳エチケット( 他人に感染させないために、個人が咳やくしゃみをする際に、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖を使って口や鼻を押さえること)や手洗い(30 秒以上、石鹸で流水を使用)などの実施を含む標準予防策です。
また風邪症状があれば、外出を控え、やむを得ず外出する場合にはマスクを着用することが大切です。
ウイルス検査を行わなければ感染しているかどうかはっきり区別することはできませんので、すべてのスカウト、指導者が「手洗い」「マスク」など個人的防護を実践して、「自分がうつらない」そして「人にうつさない」ような日常生活を心がけるようにしましょう。

6. 日常の感染対策

「3 つの密」といわれる「換気が悪く」、「人が密に集まって過ごすような空間」、「不特定多数の人が集まり接触する恐れが高い場所( 電車、ショッピングモール、スーパーマーケット、コンサート会場など)」は、集団感染の危険性があります。そのため、換気が悪く人が密に集まって過ごすような空間に集団で集まることを避けるよう、厚生労働省も推奨しています。
今回の新型コロナウイルスは、飛沫・接触感染が考えられるので、
① マスクがあれば着用( 直接飛沫を浴びることを防ぐ、自分が鼻や口に触ることを防ぐ)する
ウイルスは細菌などと比べると非常に小さく、一般的なマスクではウイルスそのものを防ぐことはできませんが、ウイルスを含んだ咳やくしゃみなどの飛沫を防ぐには有効です。
② 人の「手」が触れる場所を触ったら、手をよく洗う
エレベーターのボタン、電車のつり革、ドアの取っ手、パソコンなどのほか、日常的に触れている「スマートフォン」にも注意しましょう。すぐに手が洗えないときに備えて、ウエットティッシュやアルコール消毒液(手が濡れていると効果が薄いので乾いた状態で使用)を準備することも考えましょう。


もし体調不良になった場合には、学校、仕事を休むことも大切です。無理をせず、事前に問い合わせをしてから医療機関を受診し、感染の拡大防止に努めていきましょう。

* ウイルスと人との関わり

細菌は自力で繁殖する能力がありますが、ウイルスは自力で複製することができず、他の生物の細胞に感染、寄生することで子孫を残しています。ウイルスは長い歴史の中で環境に応じて進化をし、長い間住みついたそれぞれの動物とは共存関係になるため、その動物が発病すること
はありません。今回の新型コロナウイルスも、コウモリが共存してきたウイルスと推定されています。
その共存関係に、開発やレジャーの名のもとに部外者である人間が入り込むと、人間はこれまで経験することのなかった未知のウイルスと遭遇することになります。たまたまそのウイルスがヒトに感染する能力をもてば、免疫がないために大流行となることがあり得ると考えられています。

 

日本連盟医療チーム

 

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2020年5月号より

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