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■野外活動のための安心・安全講座

2018(平成30)年度
そなえよつねに共済 事故データ分析

「そなえよつねに共済」で取り扱った事故データの分析結果をまとめましたので報告いたします。2012 年度から全加盟員が保険(2014年度からは共済)対象となり、ボーイスカウト全体における事故の傾向が把握できるようになりました。事故発生件数(報告件数)は前年より9件少ない335件で傷病の延べ数は432件でした。いくつか気づいた点をコメントしましたので、安全管理の参考にしていただければ幸いです。

 

発生月別

月別事故発生件数(n=335)8月に事故発生件数が多い傾向は例年と同様です。全事故件数の18.8%を占めています。8月の事故を分析すると、63件中42件が夏季活動中(舎営や野営)に発生しています。このうちの11件は薪割り中の切り傷です。薪割りに関する事故は例年多く、皆さんも注意を払われていると思いますが、安全対策の重要性を改めて確認する必要があります。
12月の事故発生件数は少ないですが、これは例年みられるスキー、スノーボード、スケートの事故が見られなかったことによるものです。しかしながら、1月から3月はこれらの事故が増加し、例年同様の傾向が見られます。
部位別(延べ数)

部位別事故発生件数(n=432)頭部(頭、額、顔)へのケガは、例年に比べて少なくなっています。しかしながら、腕、手、手指に対するケガが増えています。腕に関する傷病のうち、49%が骨折です。特にスキー、スノーボード、スケート中にケガをする割合が多いようです。骨折は治療に時間がかかるため、スカウト活動だけでなく日常生活に及ぼす影響が大きいので、より注意が必要です。
また手や手指の傷病は、薪割り中および調理中の切り傷で42%でした。薪割りや調理は事故の発生数が多いということを、今一度認識する必要があります。
年代別年代別では、19歳までの割合が74.3%にあたる249人でした。20代5人、30代6人と少数ですが40代29人、50代27人、60代15人を占めました。70代でも4人の事故報告がありました。年代別事故発生割合(n=335)


 

部門別部門別の傾向は、ビーバースカウトが2.1%減少、カブスカウトが1.6%増加。全事故に占める割合(非加盟員を除く)のうち、スカウトは昨年より3.7%増加の74.8%になり、指導者は25.2%となりました。
指導者/スカウトの事故発生割合の変化(n= 全体数−非加盟員)
部門別 事故発生数と発生割合(n=335)

部門別上位3傷病


活動内容

ビーバースカウト部門での事故1位は「休憩中・自由時間等」で6件、2位は「準備・片付け」で3件でした。プログラム展開中の事故は9件ですから、「休憩中・自由時間等」「準備・片付け」での事故がいかに多いのかが分かるかと思います。思いがけない場面で事故が発生しているということです。

カブスカウト部門での事故1位も「休憩中・自由時間等」の19件で、2位もビーバースカウト部門と同じ「準備・片付け」の9件でした。一方、ビーバースカウト部門とは違い、プログラム展開中の事故は41件でした。

ボーイスカウト部門での事故1 位は「薪割り」で22件でした。ナタによる切り傷がほとんどです。右利きのスカウトが多いこともあり、左手や左指の切り傷が多かったようです。第2位は「移動中」で11件でした。

ベンチャースカウト部門での事故1位もボーイスカウト部門同様の「薪割り」で9件でした。ベンチャースカウト部門においても、保護具の適切な使用など、安全について今一度確認が必要です。

ローバースカウト部門での事故1位は「薪割り」「スケート」「スノーボード」「水遊び」でそれぞれ1件です。指導者の事故1位は「準備・片付け」で14件、第2位は「スケート」で8件でした。スケート中の事故は転倒によるものがほとんどで、骨折など重傷になる傷病が多く、中には長期間の入院を余儀なくされるケースもあります。

活動内容と事故発生件数(n=335)
部門別 最も事故が多かった活動内容

 

発生場所事故が最も多かった場所は「一般キャンプ場」で68件でした。次に「山・原っぱ・公園等」であり、これらの傾向から活発に屋外で活動していることがうかがえます。発生場所で気になることとしては「道路・歩道等(自転車運転中や歩行中等の自力移動中)」で、28件発生しているということです。

傷病別(延べ数)傷病別では、「骨折」の割合が最も多く、昨年より21件減少ではありますが、94件で第1位でした。第2位は「切り傷」で昨年の59件から9件増加の68件でした。第3位の「脱臼・捻挫・靱帯損傷」は昨年の68件から11件減少の57件でした。これら3傷病で全傷病の50.7% と半数以上を占めています。「骨折」や「脱臼・捻挫・靱帯損傷」は、昨年よりも減少しています。これらの傷病は事故直後の影響のみならず、完治までの治療期間が長期にわたるなど、日常生活にも影響が出てしまいます。減少傾向なのは大変良いことです。

また「やけど」の傷病数が割合としては増加しています。「やけど」の発生状況の多くは、食事(準備中、食事中、片付け)のタイミングで発生しています。これらの活動の際には、「やけど」のリスクを低減させるような安全対策や指導が必要です。

傷病別事故発生件数と事故割合(n=432)

 

まとめ共済事業に移行して5年。全体的な傾向は変わっていませんでしたが、いくつか気になる点があります。第一に、「薪割り」や「調理中」の手や手指への事故が多く、特にベンチャースカウト部門でも増加しているという点です。器具の取り扱いや保護具の装着を徹底することは当然です。また、これらを指導する際に、なぜ器具の取り扱い方を学ぶのか、なぜ保護具を着用するのか「その意味」をスカウトに伝えることが重要です。ただ教えるだけでなく、その意味や不適切な使い方をするとどのようなことが発生するのかも含めて安全対策として指導してください。

第二に、「移動中」の事故が増加しているということです。特にボーイスカウト部門での移動中の事故が気になります。野営などからの帰宅時や移動中に事故が発生しています。車道などでの事故は、車両などとの接触が発生して大きな事故に発展することが予想されます。自転車などの「乗り方」に関する安全対策のみならず、スカウトの体調や天候、周囲の状況に十分配慮した安全対策が必要とされています。

最後に、「休憩中・自由時間」の事故です。ここ数年、発生件数が高止まりしています。ビーバースカウトやカブスカウトにとっては休憩時間イコール自由時間という認識です。指導者が予期しない行動をする可能性は十分にあります。楽しいプログラムであっても、最後に事故が起きてしまっては本末転倒です。指導者は「休憩中・自由時間」であっても、スカウトから目を離すことがないよう、他の指導者や保護者の方々と協力し、安全で安心な活動を行う努力を怠らないようにお願いいたします。

「セーフ・フロム・ハーム」・安全委員会

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2020年5月号より

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