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<機関誌「SCOUTING」2022年5月号の記事を本サイトにも掲載しております。内容は機関誌発行当時のものです。>

富士特別野営2021

2022年3月。新型コロナウイルスの影響による約半年の延期を経て、初めての春季開催になった富士特別野営。
直前に降った雪がわずかに残る高萩スカウトフィールド(以下、高萩SF)に集った全国31人のスカウトが、自然の中で寒さと孤独に耐えながら、一人ひとりが自身と向き合った5泊6日の模様をお伝えします。

参加者/スカウト15県連盟 31人、隊指導者および上級班長等: 佐久間隊長(神奈川) 他9人、スタッフ 14人

1日目|集合、基本動作、オリエンテーション、設営、開会式
2日目|パイオニアリング、スカウトスケッチ、ブッシュクラフトプラクティス、ナイトプログラムソロキャンプ準備、出発
3日目|ソロキャンプ(2日目)
4日目|ソロキャンプ帰営、通信ゲーム、アーチェリー、大営火、閉会式
5日目|撤収、奉仕活動、解散

 

はじまり

3月26日。小雨が降る中、北は北海道から南は山口まで31人のスカウトが高萩 SFに集結。その表情は、待ちに待った久しぶりの野営大会ということもあり、プログラムへの期待に満ち溢れていた。今大会は、スカウト運動の基本である野外活動を通じてその重要性を確認し、班制教育により「教わること」「学ぶこと」を再確認する。そして、プログラムとしての試練を乗り越える体験をとおして、信頼と絆の大切さを知り、友情を育み、スカウトスピリッツ(徳性、忍耐力、気力、清貧)を実践することを目的としている。高萩SFに到着したスカウトたちは、これから始まる訓練が、隊の仲間と行ってきた楽しい野営生活とは一線を画したものであること、自分自身がそこに挑戦しに来た意味を再確認し、気を引き締めた。

闇夜のなか、かがり火に照らされるスカウトたちは、少し緊張した面持ち。代表スカウト2人による宣誓で、コロナ禍の富士特別野営が開会した。


 個のスキルと仲間との協力

高度な野営活動が目的の今大会。飛行機故障により、山中にて班員がバラバラに露営するというストーリーのもと、チームビルドと個々のスキルを確認するプログラムを展開。2日目はパイオニアリングから。現場監督役のスカウトの指示のもと、三脚信号塔の作成に取り組む。はじめは遠慮がちだったスカウトも、徐々に自分の役割を探して互いに声を掛け合いながら危険な作業にも挑戦し、無事2基の信号塔を立ち上げることに成功した。その後は翌日から始まるソロキャンプに向けた準備。今回は、予期せぬ露営というストーリー展開のため、テントもなければマッチやライターもない。氷点下にもなる寒さの中でテントを使わず防水シートでいかに快適な生活環境を整えられるか……
ファイアスターターや火打ち石、チャークロスなどを使用して自分で熱源を確保するスキルを確認し、翌日からの生活に備えた。


 

ソロキャンプ

3日目。この日から、人の手がほとんど入 っていない山中で、孤独と寒さに耐える2泊3日の野営生活。今回の富士特別野営では、コロナ禍の開催という状況を逆手にとり、ソロキャンプというこれまでにない形で、スカウトが自分自身と対峙する時間をもつ。スカウトは、与えられた防水シートと自然物とで思い思いの寝床を作り、2日間の生活環境を整えた。静かな自然の中、一人で過ごす時間は孤独だ。自ら用意してきた課題に取り組む者、自分の周りに唯一ある自然と調和して自分自身を見つめ直す者、これからのことに想いを馳せる者など、それぞれのスカウトが孤独な時間を自分自身のために使った。
満天の星の下で、スカウトたちは何を感じ、何を想ったか……


5日目の朝 6:00。まだ陽が昇り始めたばかりの薄暗い中で活動開始。
散らばって野営していたスカウトたちは、隊指導者の先導のもと、一人、また一人と隊列に加わり、帰営の歩みを進める。宿営地への道中、急勾配な崖がスカウトの目の前に現れると、一人ひとりが作ったコマンドロープを繋ぎ合わせることで1本のロ ープにし、それを頼りに崖を突破。数日前に初めて会ったばかりであっても、スカウトたちは短期間で互いを知り、それぞれの技能とチームワークを発揮した。
宿営地に帰着すると、閉会に向けて感謝の心をもって備品を整備。


営火、そして閉会へ

最終日の夜。初日の夜と同じように暗闇の中で営火に照らされるスカウトたち。
自分と向き合う孤独な夜を過ごしてきたスカウトは、ボンファイアで仲間との交流を図り、各々が今大会を通じて得たものを踏まえて「Creating a Better World」に向けた目標を語り合った。続く閉会式。福嶋日本連盟コミッショナー(開催当時)から、参加したすべてのスカウトに完修章が手渡されると、スカウトの目には自信と希望に満ち溢れ、力強く輝いていた。最後に、富士特別野営への挑戦をやり遂げたスカウト31人に向け、スタッフたちから今後の活躍を祈念して弥栄が贈られた。
最終日、スカウトたちは名残惜しそうに撤収し、スタッフたちに見送られて今回の挑戦の地・高萩スカウトフィールドを後にした。



 

日本連盟コミッショナー(開催当時)

福嶋 正己

富士特別野営を通じて

2021年8月に開催を予定していた富士特別野営2021が、半年の延期を経て3月31日に無事終了しました。
2007年、世界スカウト運動100周年の年にイギリスで第21回世界スカウトジャンボリーが開催され、日本連盟もこの年に6泊7日の野営「富士チャレンジキャンプ」を、いまは無き山中野営場で行いました。
プログラムの試練を乗り越える体験の中から、信頼や絆、友情を育み、スカウトスピリット(徳性、忍耐力、気力、清貧)の実践を目的とした大会。数年が経過し、このプログラムは現在のベンチャースカウトに、日本連盟として提供するプログラムであることが周知されるようになりました。
私自身、富士特別野営に6回も携わることができ、大変良かったと思っています。この間に富士特別野営を経験したスカウトたちは、社会で、またスカウト活動において、大きく羽ばたいていると信じています。そして、チームを組んだ熱心な成人指導者たちの献身的な奉仕には頭が下がり、感謝の気持ちで一杯です。
「スマートで、目先が利いて、几帳面、負けじ魂これぞスカウト」という言葉があります。参加したスカウト、奉仕をお願いした指導者に、これからの日本のスカウト活動を牽引していってほしいと願うばかりです。

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2022年5月号にも掲載している内容です。

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