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<機関誌「SCOUTING」2022年7月号の記事を本サイトにも掲載しております。内容は機関誌発行当時のものです。>

■野外活動のための安心・安全講座
夏季の諸活動への配慮

いよいよ夏本番 ! コロナ禍で活動が思うようにできなかったり、キャンプは久しぶり、といった団や隊もあるのではないでしょうか。近年では、ゲリラ豪雨、猛暑といった自然との向き合い方にもさまざまな「そなえ」が必要となっています。また、この2年間で学校の行事や活動も自粛されており、スカウトたちの体力への配慮についても今一度、それぞれの団や隊で確認し合いましょう。

 

久々に長期キャンプを行います。
指導者として気を付けるポイントを教えてください。

夏場の活動でも、夜間に屋外で過ごす場合など、気温がどのように変化するかを事前にスカウト自身に調べさせることが大切です。気温の変化は身体に大きな影響を与えます。一般的に、一日の中の気温差(日較差)や日ごとの気温差が8℃を超えると、体調に変化をきたす人が出始めると言われます。多くの人に経験があると思いますが、真夏の極度に暑い日よりも、梅雨の終わりや秋口に差し掛かるときに気温差は大きくなりやすいです。また、標高が高く緑に囲まれた場所のほうが朝晩の気温が下がりやすく、さらに差は大きくなります。8℃の差は、半袖シャツが心地よい温度帯から、上着などを羽織りたくなるくらいに下がるほどの変化です。
気象庁 週間予報 https://www.jma.go.jp/bosai/forecast/


 

長年ボーイ隊指導者をやっています。
最新の気象にかかわるトレンドをおしえてください。

観測・予測や通信技術の発達により、近年、災害を未然に防ぐための新しい情報発信の仕組みが次々と生まれてきています。そのことを学び、安全を確保することも指導者の努めです。今回は、とくに人命にも関わる「線状降水帯予測」「熱中症警戒アラート/暑さ指数」をご紹介します。

1「線状降水帯予測」

発達した積乱雲が列をなし、次から次へと流れ込むことによって大雨になり、災害をもたらすことがあります。その原因である「線状降水帯」の発生を予想する情報が、今年の6月1日から発表されるようになりました。この「線状降水帯予測」という情報は、「関東甲信」「東海」など、全国を11に分けた地域ごとに、その現象が起きるおよそ半日前に発表されます。深夜の大雨災害が発生しそうな時に避難すべきかどうかの判断に有効だと言われています。

2「熱中症警戒アラート/暑さ指数」

そもそも、人が感じる「暑さ」は気温だけでなく、湿度にも大きく影響されます。それらを総合して熱中症リスクの高まりに注意を呼びかけるのがこの情報です。暑さ指数「33」以上が予想される時に「熱中症警戒アラート」が発表されます。発表されるタイミングは、前日の17時頃ごろと当日朝5時ごろの2回。ただ、この「アラート」が発表されるほどでなくても、暑さ指数28の「厳重警戒」以上となることが予想される場合は、体温が上がりやすい活動は避けるべきです。
気象庁 熱中症警戒アラート https://www.jma.go.jp/bosai/information/heat.html
環境省 熱中症予防情報サイト https://www.wbgt.env.go.jp/

 

カブ隊指導者です。
天気に興味を持ってもらうプログラムを企画しています。
スカウトが面白く参加できるようなヒントってありますか ?

「正確な情報を早く掴む」ことよりも「危ないと感じる感覚を養うこと」のほうが、気象災害から身を守るためには大切です。雨の降り方を、その音で感じる。土や緑の匂いの変化で、雨の訪れや土砂災害の予兆を掴む・・自然は、実はいろんな「サイン」を与えてくれています。そのようなサインに気づくことができるようになるのは、野外活動中の災害から身を守るために大切な方法のひとつです。例えば、乾いた表面の土と、掘り返した湿った土の匂いの差を比べてみるなど、カブスカウトでも楽しめるゲームになると思います。


 


野外での活動を安全に成し遂げるのは、指導者として基本的な責務です。その真髄は、実は自然と真正面から向き合うことにほかならず、その知識・感覚を養うことで、日々の何気ない風景もぐっと彩りを帯びて感じられるようになるものと思われます。楽しい夏を迎えるその前に、ぜひ「野外での安全な活動のために大切なこと」に目を向けていただければ幸いです。

 

ミニクイズ
キャンプ中に湿度計を配置するのに適した場所は ?

①日陰で涼しい、食堂フライの下
②いつでも確認できるように、集会広場
③隊長が見るものだから、隊長のテントの中
④忘れちゃうから、救急箱の中


 

正解は…① 日陰で涼しい、食堂フライの中

多くの人が活動する場所を測ることが基本です。ただ、広い屋外に設置すると測器が直射日光を浴びてしまい、正確に測ることができません。直射日光を避けながら、風通しの良い場所を選ぶことが大切です。湿度計選びにおすすめなのは、温度計の機能も持ち合わせた「温湿度計」です。これによって、気温はそれほど高くなくてもムシムシと湿度が高くて体感的に暑さを感じる日の温度や湿度を具体的な値として知ることができます。

 

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2022年7月号にも掲載している内容です

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