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■ 野外活動のための安心・安全講座
雪崩(なだれ)から身を守る

1. はじめに
地球温暖化や気候変動の影響もあってか、ここ数年、日本では暖冬と厳冬が繰り返されている状況にあります。加えて、日本は、国土の半分以上が「豪雪地帯※1」に指定され、下の図のように日本海側の地域に集中しています。この豪雪地帯を中心に発生している雪の事故や災害の中で、広範囲にわたって甚大な被害を及ぼすのが「雪崩」です。毎年、雪崩による災害は1 〜3月を中心に発生しており、死者や行方不明者を伴う被害も起きています。※2

2. 雪崩ってなに?
雪崩とは、厳寒期や春先に発生する「斜面上にある雪や氷の全部、または一部が肉眼で識別できる速さで流れ落ちる現象」のことをいいます。最大で時速200㎞ものスピードに達することもあり、新幹線並みの速度で斜面を滑り落ちていきます。雪崩は「すべり面」の違いによって、大きく2つのタイプに分けられます。それが「表層雪崩」と「全層雪崩」です。以下の図は、表層雪崩と全層雪崩を比較したものです。発生時期や原因によって、雪崩のスピードが違うことなどを意識してください。

3. 雪崩から身を守るためには
このように、表層雪崩であっても全層雪崩であってもスピードが速いため、ひとたび発生してしまうと、発生に気づいてから逃げることが困難です。そのため、雪崩災害から身を守るためには、前もって雪崩が発生しやすい場所や条件などを知っておくことが重要といわれています。

1 発生しやすい場所
• 急な斜面(傾斜が30度以上※3になると発生しやすく、35度〜45度が最も危険。また、落石注意の標識が設置されている場所)
• 低木林やまばらな植生の斜面

2 発生しやすい条件
• 気温が低く、すでにかなりの積雪があるうえに短期間で多量の降雪があったときや急傾斜(特に雪庇(せっぴ)、吹きだまりができている斜面)では、表層雪崩発生の危険があります。
• 過去に雪崩が発生した斜面、春先や降雨後のフェーン現象などによる気温上昇時、斜面に亀裂ができている場合は、全層雪崩発生の危険があります。

3 雪崩発生の前兆現象
雪崩は多くの場合、以下のような発生の前兆現象が見られるといわれています。前兆現象をしっかりと捉えて、雪崩事故に巻き込まれないようにしたいものです。
• 雪庇:山の尾根から雪が張り出している状況
• 巻きだれ:雪崩予防柵から雪が張り出している場合
• 斜面が元の地形と異なって平になっている場合
• 斜面をころころとるボールのように雪のかたまりが落ちてきた場合
• 斜面にひっかき傷が付いたような雪の裂け目ができている場合
• 雪しわ:ふやけた指先のようなシワ状の雪の模様

このような前兆現象の有無を観察し、「そなえよつねに」を意識して冬のプログラムを展開しましょう。

「セーフ・フロム・ハーム」・安全委員会


※ 1 豪雪地帯対策特別措置法によって指定され、冬期に大量の積雪がある地域。積雪の度が特に高く、かつ、積雪により長期間自動車の交通途絶等の住民生活に著しい支障を生ずる地域は、「特別豪雪地帯」として指定。
※ 2 近年では、2017(平成29)年3月27日に栃木県那須郡那須町のスキー場で発生した春山登山会に参加していた高校の生徒、教員ら8名が死亡した事件があります。
※ 3 スキーの上級コース(30度以上)同程度

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2021年1月号より

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