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<機関誌「SCOUTING」2022年5月号の記事を本サイトにも掲載しております。内容は機関誌発行当時のものです。>
■野外活動のための安心・安全講座
2020(令和2)年度
そなえよつねに共済 事故データ分析

「そなえよつねに共済」で取り扱った事故データ分析の結果がまとまりましたので報告いたします。2012年度から全加盟員が保険(2014年度からは共済)対象となり、ボーイスカウト全体における事故の傾向が把握できるようになりました。事故発生件数(報告件数)は104件で、傷病の延べ数は153件でした。いくつか気づいた点をコメントしましたので、安全管理の参考にしていただければ幸いです。

 
発生月別
新型コロナウイルス感染症の影響により、事故発生数の低下が顕著になっています。特に4月と5月の件数は0件ですが、これは緊急事態宣言が発出され活動自体が減っていた時期と重なります。8月に事故件数が多い傾向は、例年と同様です。全事故件数の22.1%を占めますが、昨年度(2019年度:96件)より73件減少しています。活動中に誤 って転倒する、薪割り中の切り傷や火起こし中のやけどのほか、ハチやブユ、ダニによる虫刺されによる被害も報告されています。 1月、2月の件数が少ないことも緊急事態宣言の発令と相関が見られます。3月になると緊急事態宣言が解除されて活動が再開されたことに伴い、事故件数も増加しています。  
部位別(延べ数)
受傷部位の傾向としては、頭部や顔、腕から先、脚下がほとんどを占めています。例年に比べ活動自体が減っていたため受傷数は減少していますが、部位別の割合に大きな違いは認められません。事故による受傷部位の傾向は毎年同様であり、なお一層の注意をしていかなければなりません。顔の受傷が24件ありますが、このうち顔面(鼻、耳、ほお、あご等)は16件、うち11件は自転車での転倒によるものです。自転車での転倒は一歩間違えると周囲を巻き込んだ大きな事故になる可能性もあります。安全対策のみならず、自転車の乗り方に関する知識も十分に身につける必要があります。  
年代別
19歳までの割合が70%にあたる73人でした。20代と30代は少数ですが、40代は12人、50代では11人に事故が発生しています。さらに、60代は3人、70代も1人の事故報告がありました。  
部門別
部門別の傾向はビーバースカウトが1.1%減少、カブスカウトが6.2%減少、ボーイスカウトが10.6%増加、ベンチャースカウトが1.3%減少、ローバースカウトが0.8%増加でした。全事故に占めるスカウト全体では70.9%とでした。一方、指導者の割合(非加盟員を除く)は29.1%と昨年とほぼ同様です。  
部門別 上位3傷病
 
活動内容
ビーバースカウト部門での事故1位は「ゲーム」で2件、2位は「ハイキング・ナイトハイク」「移動中」「休憩中・自由時間等」で各1件でした。プログラム中が大多数を占めますが、活動前後や休憩時間も十分な安全対策を講じることが必要です。カブスカウト部門での事故1位は「休憩中・自由時間等」で5件、2位は「サイクリング」「工作」「移動中」でそれぞれ2件でした。 ボーイスカウト部門での事故1位は「移動中」で9件、2位は「薪割り」で8件でした。移動中は自転車での事故が多く、安全保護具の着用や正しい交通ル ールを守ることが重要です。ベンチャースカウト部門は、「サイクリング」「ハイキング・ナイトハイク」「移動中」で各1件。ローバ ースカウト部門は、「調理」「登山」「サイクリング」で各1件でした。 指導者の事故1位は「ゲーム」「移動中」でそれぞれ4件、2位は「準備・片づけ」で3件でした。  
発生場所
事故の発生場所として最も多かったのは「山・原っぱ・公園等」でした。ついで「道路・歩道等(自転車運転中や歩行中等の自力移動中)」です。新型コロナウイルス感染症によりキャンプ等の活動が自粛されたことも影響しています。 移動中は大きな事故につながる可能性が高いため、今一度安全に対する意識をもつことが重要です。  
傷病別(のべ数)
傷病別では「骨折」の割合が最も多く、前年度より61件減少の39件で第1位でした。第2位は「切り傷」で前年度49件から26件減少の23件でした。第3位の「擦り傷」は昨年度から2件増加の20件でした。これら3傷病で全傷病の53.6%を占めています。またその他の中で気になったのがハチやブユ、ダニによる虫刺されです。毎年虫刺されの報告は多いため、服装や害虫対策などは今一度十分に配慮してください。  
まとめ
共済事業に移行して7年目、新型コロナウイルス感染症が流行してから初めての本格的な事故分析になりました。やはり活動が縮小したことから、事故発生件数が大幅に減少しています。裏を返せば、コロナ禍で活動自粛になる前までは、より活発な活動を展開していただいていたということにもなります。活動を再開していくうえで、気をつけていただきたい内容についてまとめます。 第一に、休憩中の事故発生の防止です。ビーバースカウトやカブスカウトにとって、休憩は自由時間です。大人たちにとっては体を休める時間も、子どもたちにとっては格好の遊ぶ時間になります。安全管理を十分に行い、事故防止に努めてください。 第二に、久しぶりの野外活動によるけがです。新型コロナウイルス感染症により、キャンプなどの活動を自粛されていた方も多いかと思います。こうした状況からキャンプなどを再開すると、思わぬけがや事故、病気になる可能性があります。特にナイフやナタによる手元のけが、熱中症などの危険性について、改めて考え、スカウトに伝えていただきたいと思います。 最後に、指導者の事故についてです。今回の事故分析において、指導者の事故割合は変わりありませんでした。つまり、活動が活発化すると事故件数が増えるということです。ぜひ自身の状態を把握いただき、無理をせずスカウトたちの活動を支援いただければと思います。  

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2022年5月号にも掲載している内容です。

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