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<機関誌「SCOUTING」2023年1月号の記事を本サイトにも掲載しております。内容は機関誌発行当時のものです。>

■ 野外活動のための安心・安全講座
油断しないで! 自転車で加害事故を起こしてしまったら…

コロナ禍で活動が制限されていますが、少しずつリアルな活動を再開できるようになってきました。サイクリング活動、あるいは自宅と活動場所との往復で、自転車に乗る機会も増えてきたのではないでしょうか。自転車に乗っていると、転倒したり、自動車に接触するなどして、運転者自身がケガをしてしまうことがありますが、逆に他の方をケガさせたり、物を破損してしまうこともあります。楽しいスカウト活動を実施するには、自分だけでなく他の方にとっても安全であることが必要不可欠です。

Q自転車で加害事故を起こした場合、まず何をしなければならないのでしょうか?

A

ケガをした被害者を見ると、動揺してしまうこともあると思いますが、まずは冷静になりましょう。真っ先にすべきことは、被害者の救護活動と謝罪です。被害者の状態によっては119番通報します。また、警察への報告義務がありますので、110番通報します。救護義務を怠って現場から離れるとひき逃げになります。このようなことは絶対に避けてください。また、急に飛び出してきたなど、被害者に落ち度がある場合も同様です。

Q自転車で加害事故を起こした場合、どのような責任を負うのでしょうか?

A

刑事事件としては、過失致死傷罪、重過失致死傷罪などの責任を負うことがあります。ひき逃げをした場合には、ひき逃げについても責任を負うことがあります。民事事件としては、被害者に治療費や慰謝料などの損害が生じれば、損害賠償責任を負うことになります。最近では、裁判上、高校生が警察官と衝突し最終的に死亡させた事案で約9,300 万円、小学生が歩行中の高齢の女性と衝突し重症を負わせた事案で約9,500万円、高校生が自転車を運転していた男性と衝突し重症を負わせた事案で約9,200万円の損害賠償責任が認められました。大人ではなくまだ成長期にあるスカウト年代による運転でも、大きな事故に発展し得ることにご注意ください。
なお、スカウト活動中の事故については、賠償責任保険によって団や指導者の過失に基づく損害賠償責任が填補されることになります。もっとも、例えば、往復途上の事故に起因する損害については補償の対象にならない、対人賠償の補償額(支払限度額)は1人あたり1億円まで、などとされており、保険に加入していても責任がすべて填補されない可能性があります。

Qそもそも自転車で加害事故を起こさないようにするために、どうすればよいでしょうか?

A

事前の計画(明るい時間帯か、見通しの良いルートか、余裕を持った行程かなど)、自転車の点検(ブレーキはよく効くか、車体に損傷はないか、ベルはよく鳴るか、ライトは明るく点灯するかなど)、運転方法(道路交通法を守っているか、スピードを落として走行しているかなど)といった点について注意して、安全運転に対する意識を日頃から高く持つことが大切です。

過去事例

賠償責任保険の過去の統計によると、自転車による加害事故については、歩行者と接触してケガをさせたケース、運転中の自転車に接触して運転者にケガをさせたり自転車を破損させたりしたケース、自動車に接触して自動車を破損させたケースなどが見られます。

自転車は、自動車やバイクほどの大きさはなく、大人だけでなく子どもであっても、また免許がなくても乗ることができるため、加害事故を起こしてしまうということについて、つい油断しがちです。しかし、自転車であっても加害事故を起こしてしまった場合には、上記の通り取り返しのつかない結果を生じさせ、重大な責任を負う可能性があります。また、自分自身にケガがなかったとしても、他の方をケガさせたり、物を破損させてしまったりしたとすれば、楽しいスカウト活動が台無しです。自転車は、スカウトも指導者も運転する機会の多い乗り物です。常日頃から安全運転を心がけてください。また、本稿に関連して、この機会にぜひ「安全ハンドブック」を参照して、自転車運転に対する理解を深めてください。

賠償責任については下記をご覧ください。
https://www.scout.or.jp/wp-content/uploads/2018/12/2023_tebiki.pdf

 

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2023年1月号にも掲載している内容です

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