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<機関誌「SCOUTING」2023年7月号の記事を本サイトにも掲載しております。内容は機関誌発行当時のものです。>

全団調査の取り組みとその活かし方
5月号では全団調査から見えてくることとして、全団調査2022の集計結果で特に目立った点を紹介しました。今号は、2019年度から始まり今回で4度目となる全団調査の取り組みの意味合いと、そこから得られる分析をどう活かすかについて説明します。

 

全団調査は、2019年当時の中途退団抑止特別委員会が退団抑止の対策を考えるために、まずは全国の中途退団の状況を分析しようとして始めたもので、当初は悉皆(しっかい)調査という名称で検討していました。悉皆とは「ことごとく、みな」という意味のごとく、全国すべての団に対して、中途退団の状況だけでなく、いろいろな項目について調べようと、今に続く全団調査がスタートしたのです。現在は、中途退団抑止特別委員会に替わって教育推進本部が主管で実施しています。日本連盟では、2007年度にも「加盟登録にあたっての調査」実施しています。
団が(Excelに)入力した情報を集計・分析することで、さまざまなことが分かりましたが、加盟登録の情報は利用しませんでした。そのため中途退団者(非継続者)や年齢別の分析などはできず、加盟員の動態は十分につかめませんでした。今の全団調査は、各団に入力していただいた情報と、加盟登録システムからの情報を組み合わせて分析しています。
全団調査2022では、指導者のスカウト経験の有無を調査し、それと加盟登録のデータを組み合わせると、スカウト経験が「ある」指導者と、「ない」指導者の年齢・性別分布などが分かります。グラフがそれを示していますが、指導者の分布には3つの山があることが分かりました(赤丸)。

そこから、それぞれの山に属する方々に適した訓練やサポートが必要なことが見えてきました。4年の調査の継続によって「変化」を見ることができます。5月号ではコロナ禍により活動が減っていることを示しましたが、では進級状況はどうか。活動が減れば、進級もおぼつかないと思われるでしょうが、実際には進級はコロナ禍の影響を受けていません。学年によってはむしろコロナ禍前より進級率が上昇しています。これは何を意味するのでしょうか。

進級課目のなかで特にスカウト技能の部分は、野外での「実演」を求められるものが多いです。しかし「実演」が「テスト」として行われているのではないか。それなら活動がなくてもスカウトと指導者で(インドアでも)進級ができます。つまり、活動(集会・プログラムへの参加)を通じて「やった」というのではなく、進級のために「やった」のではないか。そういう状況が見えるわけです。そこから、進級への向き合い方を考える必要性が見えてきました。
このように全団調査の分析からは、さまざまなことが分かります。全団調査2022を分析して分かったことについては『全団調査2022の注目点』としてWEBサイトで紹介していますのでぜひご覧ください。ただ、WEBサイトで紹介しているのは分析の「例」です。もっと多くの分析があり、別の目で見れば、別の解釈ができます。各県連盟(県コミッショナー)には、「統計サイト」を提供しています。これは『注目点』に掲載している情報をはじめ、多くのグラフやデータを見るためのツールで、『注目点』はそのうちのほんの一部となります。
さらに『注目点』は全国の傾向を見ているだけです。日本連盟の施策を考えるには役立ちますが、状況は県連盟ごとに大きく違い、県連盟や地区の施策を考えるには十分ではありません。そこで「統計サイト」は県連盟や地区に絞って分析できるようにしています。ぜひ県連盟での施策の立案に活用して欲しいと考えています。全団調査の入力は日本連盟や県連盟の施策( サービス)が効果的に提供できますので、これからもご協力よろしくお願いいたします。


詳しくは日本連盟WEBサイトの全団調査のページよりご覧いただけます。

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2023年7月号にも掲載している内容です

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