日本では、この目標についてイメージしにくいという人も多いかもしれませんが、日本国内においても多くの不平等が存在します。国際社会において共通課題であるジェンダー(性別)の問題、子どもや大人のいじめ、高齢者や障がい者の人権、そして新たな課題として新型コロナウイルス感染症におけるさまざまな差別や不平等が生じています。この目標は、不平等が生まれる理由のひとつである「格差」の是正や、差別が生じてしまう法律や慣習をなくすことを目指しています。
国連は、今年で創設75周年を迎えます。これを記念し、現在、世界の人々に対し、未来に関する対話(global conversation)を促しています。どんな未来を望むか、あらゆる年代の人がさまざまな場所で自分に関係することとして考え、話し合い、行動することが求められています。国連では、世界的に広まっている新型コロナによる健康危機を含め、気候変動や紛争、飢餓といった課題に関するWeb アンケートを実施しています。アンケートで出た意見やアイデアは、第75回国連総会(2020年)のイベントで提示される予定です。
また、アンケートの他にも多くのコンテンツが用意されています。特に、動画「地球を救う3つのこと」は、「地球に対してできることを考えることで、人も国も平等な世界を目指す」ということを考えられるように1分程度にまとめたもので、スカウトにも分かりやすい動画です。
「国連創設75 周年」日本連盟特設ページ
家族や隊の仲間と一緒に「地球を救う3つのこと」の動画を見てみましょう。そして、地球にとって大切なことは何か、どういう世界になってほしいかを考えてみましょう。私たちは、自分でも気がつかないうちに誰かを差別してしまっているかもしれません。どんな人にも悩みや悲しいことがあることを理解し、もう一度、自分自身に問いかけて、私たちの未来について考えて、それをみんなで共有してみましょう。
自分たちの隊や団、または家族と一緒に、私たちの社会に対して今できることは何なのか、話してみましょう。気軽に話し合うことで、自分が困っていることや感じていることを共有できます。また、ベンチャースカウトであればフォーラムの形式を用いて、しっかりと議論する場面を設定することもできます。最終的には、それらの考えや思いをどのように行動に移し、継続していくのかという意識をもって、普段の生活で実践していきましょう。
古くから日本では、台風や大雨などの風水害、地震や火事に悩まされ、近年では、温暖化などの「気候変動」という言葉もよく耳にします。かつて農業が産業の主体であった日本は、気候の影響を受けた農作物の不作によって、飢饉や飢餓に苦しむことも多くありました。また、世界に目を向けると、住民を巻き込んだ内紛や戦争によっても同様の問題が発生しています。この目標は、飢餓を減らし、子どもからお年寄りまですべての人が栄養のある十分な食事をとれるようにすることを目指しています。
SCOUTING2020年3月号(No.736 P.11)でもご紹介した国連WFP協会のキャンペーン「ゼロハンガーチャレンジ」が9月1日に始まることから、より詳細な取り組み方法についてご紹介します。自分たちの身近なところで食品ロスについて考えてみましょう。

© Mayumi Rui
それぞれの家庭で「廃棄してしまう食材トップ5」を調べましょう。その結果を共有して、共通する食材はあるか、家庭ごとにまったく異なるのか、みんなで話し合ってみましょう。食材が出そろったら、「食品ロスレシピ」をみんなで考えてみましょう。自分が食べたいものや「みんなで作ったらおいしそう」というものでも構いません。アイデア次第で捨てられるはずだった食材をおいしい食事に変えることで、食事の大切さや社会貢献を実感できるはずです。
廃棄されやすい食材を調べて、廃棄しないですむ方法を考えてみましょう。食材を長持ちさせる方法や傷みやすい食材から順番に利用することは、キャンプ中の野外料理でも役立つスキルです。今後の活動で活かせるように考えましょう。また、「世界食料デー」について調べ、世界の飢餓がどのような問題であるのか、その課題に対して国内外でどのような取り組みがあるかをまとめてみましょう。「食」には、生産、加工、流通、調理や提供の方法など多くの工程があり、残さず食べる( 廃棄を減らす)ことまでが一連の流れになっています。どれかひとつのことだけ考えるのではなく、全体的な視野で私たちにできる改善策を考えてみましょう。
ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2020年9月号より