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一緒に考えよう! 持続可能な社会のために

持続可能な開発目標(SDGs)は、「leave no one behind(地球上の誰一人として取り残さないこと)」を目指し、先進国と途上国が一丸となって達成すべき17の目標と具体的な取り組みである169のターゲットによって構成されています。今号では、今年で創設75周年を迎える国際連合(国連)※1と、世界の学校給食の提供に尽力する国連WFP協会※2の取り組みから、それぞれの年代でできる事例をご紹介します。

個別の目標から考えよう
目標10
「人や国の不平等をなくそう」

日本では、この目標についてイメージしにくいという人も多いかもしれませんが、日本国内においても多くの不平等が存在します。国際社会において共通課題であるジェンダー(性別)の問題、子どもや大人のいじめ、高齢者や障がい者の人権、そして新たな課題として新型コロナウイルス感染症におけるさまざまな差別や不平等が生じています。この目標は、不平等が生まれる理由のひとつである「格差」の是正や、差別が生じてしまう法律や慣習をなくすことを目指しています。

 

国連創設75周年

国連は、今年で創設75周年を迎えます。これを記念し、現在、世界の人々に対し、未来に関する対話(global conversation)を促しています。どんな未来を望むか、あらゆる年代の人がさまざまな場所で自分に関係することとして考え、話し合い、行動することが求められています。国連では、世界的に広まっている新型コロナによる健康危機を含め、気候変動や紛争、飢餓といった課題に関するWeb アンケートを実施しています。アンケートで出た意見やアイデアは、第75回国連総会(2020年)のイベントで提示される予定です。
また、アンケートの他にも多くのコンテンツが用意されています。特に、動画「地球を救う3つのこと」は、「地球に対してできることを考えることで、人も国も平等な世界を目指す」ということを考えられるように1分程度にまとめたもので、スカウトにも分かりやすい動画です。

「国連創設75 周年」日本連盟特設ページ


家族や隊の仲間と一緒に「地球を救う3つのこと」の動画を見てみましょう。そして、地球にとって大切なことは何か、どういう世界になってほしいかを考えてみましょう。私たちは、自分でも気がつかないうちに誰かを差別してしまっているかもしれません。どんな人にも悩みや悲しいことがあることを理解し、もう一度、自分自身に問いかけて、私たちの未来について考えて、それをみんなで共有してみましょう。

 

関連するチャレンジ章に挑戦しよう

国際:この取り組みをきっかけに国際連合について調べ、細目(1)の内容に取り組む。


市民:細目(2)や(4)に関連付けて、住んでいる地域をより良くするためにできることを考える。

自分たちの隊や団、または家族と一緒に、私たちの社会に対して今できることは何なのか、話してみましょう。気軽に話し合うことで、自分が困っていることや感じていることを共有できます。また、ベンチャースカウトであればフォーラムの形式を用いて、しっかりと議論する場面を設定することもできます。最終的には、それらの考えや思いをどのように行動に移し、継続していくのかという意識をもって、普段の生活で実践していきましょう。

 

関連する技能章に挑戦しよう

公民:細目(5)に関連付けて、市民権(Citizenship)について調べてみる。


リーダーシップ:細目(4)に関連付けて、「傾聴」を意識して仲間と話し合いをする。

 

目標2
「飢餓をゼロに」

古くから日本では、台風や大雨などの風水害、地震や火事に悩まされ、近年では、温暖化などの「気候変動」という言葉もよく耳にします。かつて農業が産業の主体であった日本は、気候の影響を受けた農作物の不作によって、飢饉や飢餓に苦しむことも多くありました。また、世界に目を向けると、住民を巻き込んだ内紛や戦争によっても同様の問題が発生しています。この目標は、飢餓を減らし、子どもからお年寄りまですべての人が栄養のある十分な食事をとれるようにすることを目指しています。
SCOUTING2020年3月号(No.736 P.11)でもご紹介した国連WFP協会のキャンペーン「ゼロハンガーチャレンジ」が9月1日に始まることから、より詳細な取り組み方法についてご紹介します。自分たちの身近なところで食品ロスについて考えてみましょう。

ゼロハンガーチャレンジ

〜食品ロス× 飢餓ゼロ〜

このキャンペーンは、国連WFP 協会が「世界食料デー(10月16日)」の取り組みとして、食品ロスと飢餓ゼロをテーマに実施するものです。食品ロスを減らすためのアクション(野菜の皮など捨ててしまいがちな食材で料理するなど)をSNS に投稿したりシェアしたりすることで、協力企業が1アクション120円を国連WFP 協会に寄付し、飢餓状態にある子どもたちへの給食支援に役立てられます。
食事は、私たちの生活に欠かせません。ですが、本来であれば世界の人口を賄うだけの食料があるにもかかわらず、およそ6億9,000万人が飢えに苦しんでいるといわれます。その一方で、毎日大量の食べ物が廃棄されているのが現実です。「食品ロス大国」である日本でも、この問題から目をそらすことはできません。

© Mayumi Rui

 


それぞれの家庭で「廃棄してしまう食材トップ5」を調べましょう。その結果を共有して、共通する食材はあるか、家庭ごとにまったく異なるのか、みんなで話し合ってみましょう。食材が出そろったら、「食品ロスレシピ」をみんなで考えてみましょう。自分が食べたいものや「みんなで作ったらおいしそう」というものでも構いません。アイデア次第で捨てられるはずだった食材をおいしい食事に変えることで、食事の大切さや社会貢献を実感できるはずです。

 

関連するチャレンジ章に挑戦しよう

料理家:細目(3)に関連付けて、自宅で「食品ロスレシピ」に挑戦する。


手伝い:細目(5)に関連付けて、食事の準備から調理、後片付けまで実施する。

廃棄されやすい食材を調べて、廃棄しないですむ方法を考えてみましょう。食材を長持ちさせる方法や傷みやすい食材から順番に利用することは、キャンプ中の野外料理でも役立つスキルです。今後の活動で活かせるように考えましょう。また、「世界食料デー」について調べ、世界の飢餓がどのような問題であるのか、その課題に対して国内外でどのような取り組みがあるかをまとめてみましょう。「食」には、生産、加工、流通、調理や提供の方法など多くの工程があり、残さず食べる( 廃棄を減らす)ことまでが一連の流れになっています。どれかひとつのことだけ考えるのではなく、全体的な視野で私たちにできる改善策を考えてみましょう。

関連する技能章に挑戦しよう

公民:細目(3)に関連付けて、日本における国際貢献について、食の観点を加えて調べる。


野営管理:細目(1)に関連付けて、食材を余すことなく使えるように食材の手配を考える。


1 国際連合(United Nations): 第2次世界大戦を防げなかった国際連盟の反省を踏まえ、1945年10月に51か国の加盟国で設立され、日本は1956年12月18日に加盟(80番目)。現在は193か国が加盟しています。国際平和と安全の維持、諸国間の友好関係の助長、「経済」「社会」「文化」などに関する国際協力の実現を目指して活動しています。
※ 2 国連WFP 協会: 飢餓と貧困の撲滅を使命とするWFP国連世界食糧計画を支援する認定NP法人で、日本におけるWFP国連世界食糧計画の公式支援窓口です。企業や団体と協力して世界に給食を届ける活動や、国内における世界の飢餓問題やWFP 国連世界食糧計画の食料支援活動に関する情報発信を行っています。

 

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2020年9月号より

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