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本誌2020年9月号(No.739)でもご紹介した「ボーイスカウトとあそぼう! ワクワク自然体験あそび」事業(以下、自然体験あそび事業)が、全国各地で始まっています。当初、全国717会場での開催を予定していた本事業は、各地域の協力により843会場(10月14日現在)での開催となる予定です。今号では、すでに実施した会場の取り組みを、参加した保護者の声とともにご紹介します。

 

自然体験あそび事業

文部科学省委託事業の趣旨として、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響による野外活動の減少や生活の不安を解消するため、自然体験活動の提供を通じて子どもたちの閉塞感を打破し、元気を取り戻して健やかな成長を図ることを目指す。
新型コロナの影響により停滞状況にあったスカウト活動や新規募集活動に対し、団や地区単位での募集活動を促し、全国的にボーイスカウトの露出を高め、集中的に新規加盟員の獲得を行う。

上記のとおり、本事業のねらいは、単に加盟員であるスカウトが自然体験活動を行うのではなく、地域の子どもたちにもその機会を提供し、スカウトの募集活動に繋げるところにあります。

 

事業の準備状況や実際の取り組みなどからわかってきたこと

多くの子どもたちに参加してもらうために

一人でも多くの子どもたちに参加してもらうため、今回の事業の「募集」「告知」については、学校を通じて案内チラシを配布することをポイントにしています。全国統一デザインのチラシには会場ごとに日時等の情報を記載し、学校を通じて対象学級の児童に配布します。また、開催情報は日本連盟の特設サイトにも掲載し、参加申し込みはオンラインでも受け付けます。チラシとSNSどちらか一方ではなく併用することにより、今後の事業展開の際、より有効な募集手段を検証することができます。近年はインターネット等の発達により、なんらかのニーズがある人がキーワードを検索してホームページ等から情報を得ることが多いと考えられる一方で、チラシは潜在的なニーズのある家庭に有効な手法といえます。特定のコミュニティー(学校)を通じて、対象児童の家庭に届けることにより、具体的な事業の機会を提供することで「考えてみる(検討する)」機会をつくることができます。

 


地域とともに行う「子ども自然体験活動推進協議会」の設置

事業実施にあたり、都道府県単位で「子ども自然体験活動推進協議会」を設置します。この協議会は、自然体験あそび事業の計画と推進の役割を担い、地域の子どもや家庭への(特に学校を通じた)アプローチを行えるように地域行政や関係団体と協働するもので、事業実施以降も地域の関係者と協力関係を築くことがねらいです。全国どの地域でも、行政や他団体との日常的な協力関係の構築、維持が大切です。今回のような協議会の設立は、政令指定都市がある都道府県では、ボーイスカウト単独での依頼はなかなか難しい状況があるようです。そのような場合でも、市区町村の教育委員会や該当する学校、地域との連携を密にすることが望まれます。

 

具体的な取り組み紹介(新潟第9団)

【概要】
日 時: 10月4日(日)10:00~12:00
参加者: 一般児童6人、スカウト12人 ※一般児童は定員10人で募集
内 容: 参加者それぞれがアルミ缶を使ったご飯の炊き方を体験することで、身近な物でご飯を炊く方法を学び、体験共有を図った。
持ち物: マスク(コロナ対策用) ※参加費無料


参加児童の保護者コメント

外出できない日々が続いたので、新しい経験をさせようと思い参加を決めた。両親ともにこういった活動には無縁だったので新鮮だと感じた。実際にボーイスカウト活動の様子を見ると団結力やチームワークを感じた。子どもたち一人ひとり活発で、意思をもって取り組んでいるのだと感じることができた。
(小3男児 母)
もともと家族でキャンプなどをすることが多く、野外活動が好きだった。学校で配布されたチラシを持って帰ってきて、息子が「行きたい」と自ら言ってきたので新型コロナのことはあまり考えなかった。実際に活動をしてみると、子どもでもできる簡単な内容で楽しかった。やっぱり制服がカッコイイなあと思った。自分も幼いときにカッコイイなあと思っていたので息子も思っているのでは。
(小1男児 父)
実際に参加してみてとても楽しかった。息子のクラスにビーバースカウトの子がいて、そのお母さんがクラスのLINEで募集していた。新型コロナの影響で「集中力が低下した」と息子の習い事の生に言われ、家でもゲームばかりなので、外での活動が良い機会になるかなと思い参加を決めた。また、下の子が3歳で、お兄ちゃんに関われる時間も少なかったので楽しい経験になると思った。実際、缶切りやマッチなど初めての経験になったので良かったと思う。こうしてボーイスカイスカウトの子どもたちを見ると、楽しそうで仲間意識があって良かった。夫も小さいときにカブスカウトだったらしいので、その雰囲気を実感できて良かったと感じる。
(小2男児 母)
野外活動の経験をさせたくて参加を決めた。今回の活動がお米を炊くことだったので、災害時に役に立つかなということも考えた。小学校のクラスLINEグループで募集が来てこの事業を知った。実際体験してみて、難しかったけど楽しかった。子どもたちもまたやってみたいと話していた。ボーイスカウトは協調性が身につくのかなと感じた。隊長が話し始めるとみんな黙って聞いていたし、集団で何かするということが、自分の子どもたちにはあまり経験がないので、集団でなにかやらせてみたいと思った。
(小2女児・小4男児 母)

スカウトの保護者コメント

今まで、外で体を動かすことは当たり前だったので、今回の活動の参加に対して抵抗はなかった。新型コロナの状況が変わるたびに団委員長と会議をして相談していたので、今回の開催について戸惑いなどはなく、親子とも、意欲的に参加を決めることができた。

 

実施担当者のコメント

加盟員が通う小学校でのチラシ配布や、スカウトの保護者が募集の声かけをしてくれたことで、ボーイスカウトに興味のある参加者が集まった。今回の活動は、地域貢献にもなったと感じている。事前に団として新型コロナ対策について協議を重ねていたため、短い準備期間だったが、本事業をスムーズに展開できたことも大きな成果だった。また、昨年発団した新潟大学ローバースカウト隊(新潟第19団)も応援に駆けつけてくれ、感謝している。

 


開催会場も増え、これから、全国各地でさらに活発に事業が展開されていく予定です。日本連盟の特設サイトでは、日程等が確定した会場の開催予定を順次掲載しており、ここからも募集のためのヒントを得ることができます。例えば、参加者の視点で考えたとき、複数の開催情報を得ることができれば、チラシで案内された日と予定があわなくても他の日に参加するという選択肢が広がります。これをヒントに、「体験集会」とうたわずとも各団で普段の集会の実施情報を地域に周知することで、体験できる日程がたくさんあることを知ってもらい、「参加者が体験したい」ときにその期待に応えられるのではないでしょうか。また、他の会場の開催内容を見ることも、各団での体験集会企画のヒントになるかもしれません。


 


自然体験あそび事業の開催情報は特設サイトをご覧ください。
https://www.scout.or.jp/wakuwaku2020/

ボーイスカウト日本連盟機関誌「SCOUTING」2020年11月号より

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